「Claude Codeに書かせたコードを、そのまま本番へ出して大丈夫なのか」——AIにコードを書かせる開発、いわゆるバイブコーディングが広がるほど、この問いは重くなってきました。2026年7月22日、Anthropicはその不安に正面から応える形で、Claude Code用の脆弱性スキャンプラグイン「Claude Security」を公開ベータで提供開始しました。コミット前の変更だけを見るのはもちろん、コードベース全体を、いつも使っているターミナルからスキャンし、見つけた問題を検証したうえで、レビューできるパッチとして手渡してきます。本記事では、公式ドキュメントと公開情報をもとに、Claude Securityが何をするツールなのか、どういう仕組みで脆弱性を見つけるのか、導入の条件と使い方、そして過信してはいけない限界までを順に整理します。
この記事の要点
  • Claude SecurityはClaude Code用の公式プラグイン。/plugin install で入れ、コミット前の差分やリポジトリ全体を端末からスキャンして、インジェクション・認証回避・メモリ破壊といった深刻な脆弱性を洗い出す
  • 単なるパターン照合ではなく、複数のエージェントが「棚卸し→脅威モデル→調査→掃き出し→パネル検証→敵対的再検証」の6フェーズで動き、3人の検証者の多数決を通った指摘だけを報告する(誤検知を抑える設計)
  • 修正はパッチファイルとして提案されるが、適用は git apply で自分が行う。利用にはClaude Code v2.1.154以降+Python 3.9.6以降+Gitと、動的ワークフローが使える有料プランが必要。現時点はベータ

01何が起きたのか

Anthropicは2026年7月22日、Claude Code向けの脆弱性スキャンプラグイン「Claude Security」を公開ベータとして提供し始めました。公式アカウントの告知は簡潔で、「コミット前に変更をスキャンするか、コードベース全体をフルスキャンするか、いずれもすでに動かしているClaude Codeの推論の上で、ターミナルから実行できる」という内容です。

ポイントは、これがコード生成の外側にある別サービスではなく、Claude Codeの中に差し込むプラグインだということです。エージェントにコードを書かせる場所と、そのコードの安全性を点検する場所が、同じターミナルに揃います。AIが書いたコードの安全性という、これまで各社ツールや人手のレビューに任せてきた領域に、モデルを提供している当事者が自ら踏み込んだ形です。

02なぜ今なのか:「動くけど穴があるコード」問題

バイブコーディングの怖さは、出力されたコードが「動いてしまう」ことにあります。テストが通り、画面が表示され、一見完成しているように見えても、認証の抜け道や、ユーザー入力をそのままクエリに渡すインジェクションの穴が残っていることがあります。動作確認では気づきにくく、レビューを飛ばして本番に出すと、そこが攻撃の入口になります。

速く大量にコードを生成できるようになったぶん、この「動くけど穴がある」状態が世に出る回数も増えます。Claude Securityは、その穴をコミットの手前で止めることを狙った道具です。編集部の見立てでは、これは単なる新機能というより、AIコーディングの普及に対する安全側の受け皿を、モデル提供元が自前で用意し始めたという流れの一歩です。

03Claude Securityとは何か

項目 内容
提供元 Anthropic(Claude Code公式プラグイン)
形態 Claude Code内で動くプラグイン。プラグインマーケットプレイスから導入
できること コミット前の変更スキャン/リポジトリ全体のフルスキャン/検証済みパッチの提案
動く場所 手元のターミナル(すでに使っているClaude Codeの推論上)
公開状況 公開ベータ(2026年7月)。プラグイン本体はclaude-plugins-official上でv0.10.0として公開
対応OS Linux/macOS/Windows

Claude Securityがやることは、大きく3つに整理できます。リポジトリをスキャンし、見つけた候補を検証し、直し方をパッチとして提案する——「スキャン・検証・パッチ」です。従来のパターンマッチ型ツールが見落としがちな、複数ファイルにまたがる複雑な問題まで踏み込むことを目的にしています。次章から、この3段の中身を開いていきます。

04スキャン→検証→パッチの3段構え

Claude Securityの基本動作は3段です。第1段のスキャンでは、Claudeがコードの文脈を読み、ファイルをまたいでデータの流れを追いながら、危険な箇所を洗い出します。第2段の検証では、洗い出した候補すべてに敵対的な検証パスをかけ、「本当に悪用できるのか」を問い直します。第3段のパッチでは、確からしいと判断された問題について、修正案をパッチファイルとして提案します。

FIG. 01Claude Securityの3段動作
01
スキャン
文脈を読みファイル横断でデータフローを追う
02
検証
各候補に敵対的検証。悪用可能性を問い直す
03
パッチ
確からしい問題の修正案をパッチとして提案
検証を通らなかった候補は報告に載せない。人はレビューされたパッチだけを受け取る

この「検証を挟む」設計が、Claude Securityの肝です。指摘は、研究役のエージェントが見つけただけでは報告に載りません。後述する検証パネルを生き延びたものだけが、はじめて報告に上がります。誤検知に振り回される時間を減らすための構えです。

05スキャンを支える6フェーズのワークフロー

スキャンは、単発の呼び出しではなく、役割の違うエージェントが順番に動く6つのフェーズで構成されています。公式ドキュメントに沿って並べると次のとおりです。

FIG. 026フェーズのスキャン・ワークフロー
01
INVENTORY
リポジトリを構成要素に棚卸し。トップ階層のディレクトリは、必ず「スキャンする」か「明示的に飛ばす」かを決める。
02
THREAT MODEL
構成要素ごとに担当アナリストを立て、入口・出口(sink)・信頼境界・重点的に読むべき重要ファイルを洗い出す。
03
RESEARCH
専任の調査役が、入力/注入・認証/認可・メモリ/安全でない操作・暗号/機密という固定カテゴリで深掘りする。
04
SWEEP
行列的な調べ方では抜けやすい領域を、後追いで埋めるための掃き出しパス。
05
PANEL
「到達可能性・影響度・防御の有無」の3つのレンズで、1レンズにつき1票の敵対的検証を行う。
06
ADVERSARIAL
判断が際どい指摘を、最大出力で再検証・レッドチーミングする。
オーケストレーター役が全体を差配し、地図作成・調査・検証の各エージェントは読み取り専用のツールだけで動く。

検証の要は第5フェーズのパネルです。3人の検証者がそれぞれ「本物の脆弱性か(TRUE_POSITIVE)/誤検知か(FALSE_POSITIVE)」を投票し、3人中2人が本物と判断してはじめて報告に残ります。全員一致(3対0)なら確信度は高、2対1なら確信度は中に抑えられます。「多く見つける」より「確からしいものだけを残す」方向に、判定が設計されています。

スキャンの深さは、low・medium・high・maxの4段階で調整できます。段階を上げると、対象にする構成要素の上限や、1マスあたりの調査役の人数、掃き出しの回数が増えます。手早く回したいときは浅く、しっかり見たいときは深く、という使い分けです。

06見つけられる脆弱性と、賢さの正体

Claude Securityが重点的に狙うのは、軽微な指摘ではなく深刻な脆弱性です。公式が挙げるのは、メモリ破壊、インジェクション、認証回避、そして複雑なロジックの欠陥。加えて、認可の回避や、オブジェクトの直接参照(IDOR)、サーバー側リクエスト偽造(SSRF)、弱い暗号なども対象に入ります。

賢さの正体は、パターン照合を超えた「文脈の理解」にあります。従来の静的解析は、危険な関数の呼び出しなど、形の一致で警告を出すのが得意な反面、複数ファイルにまたがって初めて成立する穴を取りこぼしがちでした。Claude Securityは、コードがどう動くかをファイル横断で追うため、「この入口から入った値が、二つ先のファイルの危険な処理に届く」といった、つながりで生まれる問題を捉えることを狙っています。

具体例で考えます。あるファイルでリクエストから注文IDを受け取り、別のファイルでそのIDを使って注文データをデータベースから引く処理があるとします。それぞれのファイルを単体で見れば、どちらもごく普通のコードです。ところが、その注文IDが本当にログイン中のユーザーのものかを確かめる認可チェックがどこにも無ければ、他人の注文IDを渡すだけで他人の注文が読めてしまいます。オブジェクトの直接参照(IDOR)と呼ばれる典型的な穴です。こうした「入口のファイル」と「DBを引くファイル」を突き合わせて初めて見える問題は、1ファイルずつ形を照合する方式では浮かびにくく、コード全体のつながりと信頼境界を追うClaude Securityが狙う領域そのものです。逆に言えば、単純な文字列一致では拾えない問題に強い一方で、走らせるたびに結果が揺れる余地も残ります。だからこそ、次に触れる検証と限界の理解がセットで要ります。

ただし過信は禁物。公式は、このスキャンが従来の静的解析・依存関係スキャン・人によるコードレビューを置き換えるものではないと明言しています。結果は毎回同じにはならない(非決定的)ため、あくまで層のひとつとして重ねる前提です。

07使い方:導入とスキャンのコマンド

導入はプラグインマーケットプレイス経由です。Claude Codeのセッションから、次のコマンドでインストールして再読み込みします。

操作 コマンド
インストール /plugin install claude-security@claude-plugins-official
再読み込み /reload-plugins
マーケットプレイス未追加のとき /plugin marketplace add anthropics/claude-plugins-official を先に実行

入れた後は、既存のClaude Codeセッションの中からスキャンを起動します。日々の運用としては、コミット前に直近の変更だけをスキャンして手戻りを小さく保ち、節目でリポジトリ全体のフルスキャンをかける、という二段構えが素直です。スキャンを走らせると、日時付きのフォルダに結果がまとまり、人が読む用の CLAUDE-SECURITY-RESULTS.md(F1・F2…と番号付きで指摘が並ぶ)と、機械可読の .jsonl、スキャンのメタ情報を持つJSONが書き出されます。

08パッチは「提案」。適用は自分の手で

Claude Securityは修正を勝手に当てません。パッチは、あなたの作業ディレクトリを汚さないよう、別に用意したクローンの中で作られます。しかも、パッチを書いたエージェントとは別のエージェントが、その差分をレビューします。

レビューでは3点が確かめられます。指摘した問題を実際に解消しているか、新しい脆弱性を持ち込んでいないか、そして本来の振る舞いを保っているか。この3つを検証者が自信を持って言えるときだけ、パッチファイルが書き出されます。セキュリティを弱める変更は自動で却下される仕組みです。

FIG. 03パッチが手元に来るまで
01
別クローンで作成
作業ディレクトリは触らず修正を組む
02
独立レビュー
別エージェントが解消/無害/挙動維持を確認
03
パッチ出力
patches/ に F<n>.patch として保存
04
自分で適用
git apply で選んだものだけ当てる
適用例: git apply CLAUDE-SECURITY-<timestamp>/patches/F1.patch

最後の適用は git apply で、あなたが選んだパッチだけを当てます。AIに直させて終わりではなく、直し方の提案を受け取って、採用は人が決める——この線引きが、そのまま安全側の運用になっています。

09導入条件・料金・限界

使い始める前に、要件を押さえておきます。

項目 条件
Claude Code v2.1.154 以降
Python 3.9.6 以降(python3 としてPATH上に。標準ライブラリのみ利用)
Git 変更スキャンとパッチ適用に必要
プラン 動的ワークフローが使える有料のClaude Codeプラン
OS Linux/macOS/Windows

限界も正直に押さえておきます。第一に、このスキャン自体は隔離(サンドボックス)を持ちません。信頼できないリポジトリをそのままスキャンするのは危険で、外部のサンドボックスと組み合わせる前提です。第二に、結果は非決定的で、走らせるたびに同じにはなりません。第三に、繰り返しになりますが、従来の静的解析・依存関係スキャン・人のレビューを置き換えるものではありません。検証状況は、全指摘についてパネルが投票し終えたときだけ「verified」と表示され、そうでなければ理由付きで「unverified」と示されます。

脆弱性の検出と修正をモデル側で担う動きは、Anthropicだけのものではありません。Googleもセキュリティ用途に調整したGemini 3.5 Flash Cyberを発表しており、その位置づけはGemini 3.6 Flashと同時発表モデルを整理した記事でまとめています。

10まとめ

Claude Securityの価値は、「AIが速く書くほど、点検も同じ速さで、同じ場所でできる」ようにした点にあります。コード生成の隣に、文脈を読む脆弱性スキャンと、検証済みのパッチ提案が並び、しかも最後の採用判断は人に残る。バイブコーディングの「動くけど穴がある」を、コミットの手前で止めるための実用的な一手です。

一方で、これ一つで安全になるわけではありません。隔離を持たないこと、結果が毎回変わること、既存の解析やレビューを置き換えないこと——この3点を理解したうえで、いつものClaude Codeに一層足す道具として使うのが、いちばん素直な向き合い方です。まずは要件を満たしたうえで小さなリポジトリで挙動を確かめ、日々はコミット前スキャン、節目でフルスキャン、という運用から始めるのがよさそうです。

11よくある質問

Claude Securityは無料で使えますか?

無料ではありません。利用にはClaude Code v2.1.154以降、Python 3.9.6以降、Gitに加えて、動的ワークフローが使える有料プランが必要です。2026年7月時点では公開ベータの段階にあります。

既存の静的解析ツールの代わりになりますか?

代わりにはなりません。公式も既存の解析やレビューを置き換えるものではないと位置づけています。違いは、パターンの一致ではなくコードの文脈を読み、ファイルをまたいでデータの流れを追う点にあります。いつものレビューに一層足す道具として使うのが実際的です。

誤検知はどのように抑えられていますか?

検証パネルで3人の検証者が「本物か誤検知か」を投票し、3人中2人が本物と判断した指摘だけが報告に残ります。全員一致なら確信度は高、2対1なら中に抑えられます。検証を通らなかった候補は報告に載りません。

見つかった脆弱性は自動で修正されますか?

自動では修正されません。修正案はパッチファイルとして提案され、適用は自分が git apply で行います。内容を読んでから当てる前提の設計です。

スキャンの深さは調整できますか?

low・medium・high・maxの4段階で調整できます。段階を上げると、対象にする構成要素の上限、1マスあたりの調査役の人数、掃き出しの回数が増えます。手早く回したいときは浅く、しっかり見たいときは深く使い分けます。

どんな脆弱性を見つけられますか?

公式が挙げているのは、メモリ破壊、インジェクション、認証回避、複雑なロジックの欠陥です。加えて認可の回避、オブジェクトの直接参照(IDOR)、サーバー側リクエスト偽造(SSRF)、弱い暗号なども対象に入ります。

12出典