- DeepSeek V4-Flashは、DeepSeekが2026年7月31日に正式版(0731)を公開した低価格・高速のオープンMoEモデルです。モデルの重みはプレビュー版と同じで、学習後の調整(ポストトレーニング)だけを更新しています
- 公式が公表したエージェント系ベンチマークでは、DeepSWEが7.3から54.4、Cybergymが38.7から76.7へ伸び、9項目すべてで上位版のV4-Proプレビューを上回ったとされます(いずれもベンダー自己申告値)
- 料金は入力100万トークン0.14ドル・出力0.28ドルで、V4-Proの出力(0.87ドル)の約3分の1。OpenAI互換APIなので、既存のツールは接続先を差し替えるだけで試せます
01DeepSeek V4-Flashとは?低価格で速いオープンMoEモデル
DeepSeek V4-Flashは、中国のDeepSeekが開発する大規模言語モデルで、高速な応答と低価格を狙った軽量寄りの位置づけです。2026年7月31日、そのAPIの正式版が「0731」というビルド名でパブリックベータとして公開されました。プレビュー版は同年4月に出ており、今回はその改良版が正式なAPIとして使えるようになった、という流れです。ひとことで言えば、エージェントやバッチ処理を「安く・速く・止めずに」回すためのモデルです。
構造はMoE(Mixture-of-Experts、必要な専門家だけを動かす方式)で、総パラメータは約2,840億、推論時に実際に動くのは約130億にとどまります。投機的デコード用のドラフトモジュール(DSpark)まで含めた表記では約3,040億とされます。扱えるコンテキストは最大100万トークンで、長いコードベースやログをまとめて渡せます。現時点ではテキスト専用で、提供はAPIが中心です。重みはMITライセンスで公開予定とされ、公式は数週間のうちにオープンウェイトを出すと案内しています。同じく中国発のオープンモデルであるKimiとの位置づけはKimi K3とは?K2との違い・料金・使い方とあわせて読むと整理できます。
02プレビュー版から何が変わった?0731正式版の差分
0731正式版で変わったのは、モデルの大きさや構造ではなく「学習後の調整」です。DeepSeekは、事前学習を終えたモデルに道具の使い方や作業手順を教え込むポストトレーニングだけをやり直した、と説明しています。重みそのものは新規に作り直しておらず、同じ土台を鍛え直した「再ポストトレーニング版」です。そのため、実務で変わるのは主にエージェント作業と、OpenAIのAPI形式への対応まわりです。
| 項目 | プレビュー版(4月) | 0731 正式版 | 実務での意味 |
|---|---|---|---|
| モデルの重み | 初版 | 据え置き(変更なし) | 精度の底上げはポストトレーニング由来。追加学習の再ダウンロードは不要 |
| エージェント性能 | 低め(下表参照) | 大幅に向上 | ツールを連続で使う自動処理での完走率が上がると期待できる |
| API形式 | Chat Completions中心 | OpenAI形式に対応、Responses APIは8月上旬予定 | 既存のOpenAI向けコードを流用しやすい |
| 提供状態 | プレビュー | 正式版(パブリックベータ) | 本番採用の検討対象に上がる |
つまり、V4-Flashを一度触っていた人でも、0731は「別物として見直す価値がある更新」です。とくにエージェントとして使うなら、プレビュー版の印象のまま判断せず、正式版で測り直すのが適切といえます。
03エージェント性能はどれだけ上がった?ベンチマークの読み方
DeepSeekが公表したベンチマークでは、エージェントやコーディング系のスコアが軒並み上がりました。とくに道具を連続で使うタスクで伸びが大きく、いくつかの項目はプレビュー版から倍近くに跳ねています。ここで重要なのは、これらがすべてベンダー自己申告値で、しかも一般公開されていない評価環境(ハーネス)での測定だという点です。数字はあくまで方向性の目安として読み、採用前には自分の用途で評価するのが安全です。
| ベンチマーク | プレビュー版 | 0731 正式版 | 測るもの |
|---|---|---|---|
| DeepSWE | 7.3 | 54.4 | ソフトウェア開発の課題解決 |
| Cybergym | 38.7 | 76.7 | セキュリティ系のタスク |
| Terminal-Bench 2.1 | 61.8 | 82.7 | 端末上での一連の操作 |
| NL2Repo | 39.4 | 54.2 | 自然言語からのリポジトリ操作 |
| Toolathlon-Verified | 49.7 | 70.3 | 複数ツールの使い分け |
DeepSeekはさらに、これらエージェント系9項目すべてで、上位版であるV4-Proのプレビューを0731が上回ったと説明しています。安いモデルが上位モデルのプレビューを超える、という逆転が起きているわけです。ただし前述のとおり数値は自己申告のため、筆者としては「候補として評価に載せる価値は十分あるが、鵜呑みにはしない」という距離感で扱うのが妥当と考えます。
04出力にどんな差が出ると想定される?
ベンチマークの点数だけでは、実務で何が変わるのかは見えません。ここでは公表された仕様差から、どの作業がどう変わると想定されるかを、根拠とセットで整理します。いずれも筆者が実測した断定ではなく、公式の仕様差からの想定である点を先に明記します。
まず、ツールを連続で呼ぶ作業の完走率です。DeepSWEやTerminal-Benchが大きく伸びたという公表値から、「ファイルを読む→修正する→テストを走らせる→直す」といった多段の自動処理で、途中で手順を見失って止まる場面が減ると想定されます。エージェントに任せて席を外す使い方では、この完走率の差が体感差になりやすい部分です。
次に、コスト当たりの試行回数です。出力が100万トークン0.28ドルという価格から、同じ予算でも試行回数を多く取れると想定されます。1回で当てにいくのではなく、複数案を出させて選ぶ、失敗したら安く投げ直す、という回し方が現実的になります。ただし精度が最優先の工程では上位モデルの方が向く場面も残るため、安いモデルで数を回し、要所だけ上位モデルに任せる二段構えが、費用対効果の観点では扱いやすいといえます。
05DeepSeek V4-Flashの料金は?無料で使える?
DeepSeek V4-Flashの料金は、入力が100万トークンあたり0.14ドル(キャッシュミス時)、キャッシュヒット時は0.0028ドル、出力が0.28ドルです。完全な無料枠として大きな恒常プランがあるわけではなく、基本は使った分だけ支払う従量制です。まず試す段階では、少額のクレジットで挙動を確認する形になります。
| 区分 | V4-Flash 0731 | 補足 |
|---|---|---|
| 入力(キャッシュミス) | 0.14 | 初回など、キャッシュに無い入力 |
| 入力(キャッシュヒット) | 0.0028 | 同じ前置きを繰り返す用途で大きく下がる |
| 出力 | 0.28 | 上位のV4-Pro出力(0.87)の約3分の1 |
ポイントは、キャッシュヒット時の入力単価が桁違いに安いことです。同じシステムプロンプトや同じ資料を前置きにして何度も呼ぶ使い方(分類・要約・整形のバッチ処理など)では、2回目以降の入力コストがほとんど無視できる水準まで下がります。定型の前置きを固定し、変わる部分だけを差し込む設計にすると、この割引を最大限に活かせます。
06DeepSeek V4-Flashの使い方・導入手順
使い方は、OpenAI互換のAPIとして呼ぶのが基本です。既にOpenAIのSDKを使っているなら、接続先(base_url)とモデル名、APIキーを差し替えるだけで動きます。導入は次の3ステップです。
https://api.deepseek.com に、モデル名を deepseek-v4-flash に変える。Pythonでの最小の呼び出しは次のようになります。OpenAIのライブラリをそのまま使えるのが利点です。
from openai import OpenAI
client = OpenAI(
api_key="YOUR_DEEPSEEK_KEY",
base_url="https://api.deepseek.com",
)
res = client.chat.completions.create(
model="deepseek-v4-flash",
messages=[
{"role": "system", "content": "あなたは日本語のテック編集者です。"},
{"role": "user", "content": "この関数の役割を1文で説明して"},
],
)
print(res.choices[0].message.content)
すでにOpenAI向けに書かれた自作スクリプトや、OpenAI互換の接続に対応したツールなら、この3項目を環境変数に逃がしておくだけで切り替えられます。Claude Code側で別モデルを併用する考え方はClaude CodeでGPT-5.6 Solを使う方法の手順が近く、接続先の差し替えという発想は共通です。
07実践:自社ツール開発とサイト制作に安く組み込む
ここからは、実際にやっている業務工程に寄せて、V4-Flashをどう使うかを具体的な粒度で示します。狙いは「精度が最優先ではないが、量が多くて人手だと重い作業」を安いモデルに任せることです。前置きを固定してキャッシュ割引を受けるのが、費用を抑える勘所になります。
サイト制作:画像のalt文と説明文をまとめて生成する
LPやサイトを組むとき、画像1枚ごとのalt属性やメタ説明を手で書くのは地味に重い作業です。ファイル名や周辺見出しを渡して、alt文を一括生成させると時短になります。前置き(指示文)を固定して、変わるのはファイル情報だけにすると、キャッシュヒットで2回目以降の入力コストが大きく下がります。
prompt = """次の画像について、日本語のalt属性を20字以内で1つ返す。
装飾目的なら空文字を返す。前後の見出し文脈も考慮する。"""
def make_alt(filename, near_heading):
r = client.chat.completions.create(
model="deepseek-v4-flash",
messages=[
{"role": "system", "content": prompt},
{"role": "user", "content": f"file={filename} / heading={near_heading}"},
],
)
return r.choices[0].message.content.strip()
同じ形で、記事のメタディスクリプション案の量産や、原稿の表記ゆれチェックにも回せます。最終的な文言は人が決める前提で、たたき台を安く大量に出す用途に向きます。
自社ツール開発:問い合わせフォームの一次仕分けを自動化する
サイトのフォームに届く問い合わせを、「見積もり/採用/営業/その他」へ機械的に振り分ける社内ツールにも使えます。ラベル集合を固定した分類はV4-Flashのような軽量モデルと相性がよく、コストも小さく収まります。JSONで返させ、後段の処理に渡す形にします。
rule = """入力の問い合わせ本文を、次のいずれかに分類し
{"label": "..."} のJSONだけを返す。
ラベル: 見積もり / 採用 / 営業 / その他"""
def classify(body):
r = client.chat.completions.create(
model="deepseek-v4-flash",
messages=[
{"role": "system", "content": rule},
{"role": "user", "content": body},
],
)
return r.choices[0].message.content
この2例に共通するのは、システムプロンプト(rule)を固定し、変わる本文だけを差し込む設計です。前置きが同じなら入力側はキャッシュにヒットし、件数が増えても費用が伸びにくくなります。エージェントとして自作の自動化に組み込むなら、モデルを作る枠組みの考え方はMastra 使い方|AIエージェントを作る手順もあわせて参考になります。
08V4-ProやClaude・GPTとどう違う?
V4-Flashは「安く・速く・数を回す」役割で、同じDeepSeekでも上位のV4-Proとは狙いが分かれます。V4-Proは精度重視で出力単価も高く、V4-Flashはその出力単価の約3分の1で軽い処理を大量にさばく側です。用途で選び分けるのが前提で、片方が常に上位というわけではありません。
ClaudeやGPTとの比較でいえば、V4-Flashの強みは価格と、重みが公開予定というオープン性です。一方で、対話の作り込みや複雑な長文タスクの安定性など、上位商用モデルが得意な領域はそのまま残ります。筆者の見立てとしては、V4-Flashは「主役の商用モデルの周りで、下ごしらえと量産を安く担う脇役」に据えるのが扱いやすい位置づけです。最新の商用フラッグシップの動向はClaude Opus 5とは?Opus 4.8との違いも参考になります。
09日本語は使える?向いている人と注意点
日本語は使えます。システムプロンプトも本文も日本語で問題なく、要約・分類・整形といった実務では実用域にあります。ただしDeepSeekは日本語性能を体系的なベンチとして大きく打ち出しているわけではないため、細かなニュアンスや長文の一貫性が重要な場面では、実際の原稿で試してから採否を決めるのが安全です。
向いているのは、APIでバッチや自動化を回す個人開発者・情シス・AI活用担当です。とくに、前置きを固定して大量に呼ぶ処理を持っている人ほど、キャッシュ割引の恩恵が大きくなります。逆に、ブラウザ上のチャットUIだけで完結させたい人や、画像・音声を扱いたい人には現時点では向きません。テキスト専用でAPI中心という前提を踏まえて選ぶのが要点です。
10DeepSeek V4-Flashに関するよくある質問(FAQ)
https://api.deepseek.com に、モデル名を deepseek-v4-flash に変え、APIキーを差し替えるだけで動きます。Responses API形式への対応は8月上旬に予定されています。11まとめ:安いモデルで数を回し、要所だけ上位に任せる
DeepSeek V4-Flashを採用するかは、「精度の最後の詰めを求める工程か、それとも量をさばく工程か」で決まります。0731正式版はエージェント性能が大きく伸び、出力単価は上位モデルの3分の1という水準です。まずはOpenAI互換の接続先を差し替えて、分類や整形といった前置き固定のバッチを1つ移してみて、キャッシュ割引まで含めたコストの当たり方を確かめるのが失敗しない進め方です。
そのうえで、対話の作り込みや複雑な長文は上位の商用モデルに残し、安いV4-Flashで下ごしらえと量産を担う二段構えにすると、費用と品質のバランスを取りやすくなります。他モデルとの位置づけはKimi K3とは?K2との違い・料金・使い方やClaude Opus 5とは?Opus 4.8との違いもあわせてご覧ください。
12出典
- DeepSeek 公式(API・料金・モデル情報) api-docs.deepseek.com / platform.deepseek.com
- deepseek-ai/DeepSeek-V4-Flash-0731(Hugging Face 公式リポジトリ) huggingface.co/deepseek-ai/DeepSeek-V4-Flash-0731
- MarkTechPost「DeepSeek Upgrades DeepSeek-V4-Flash-0731 with Major Agentic and Coding Gains」(2026年7月31日)
- PC Watch「『DeepSeek V4 Flash』正式版、Proプレビューに9項目全勝」(2026年7月31日)